法政大学

渡邊雄二郎研究室 | 環境材料化学研究室

渡邊雄二郎研究室 | 環境材料化学研究室

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研究内容

 当研究室で着目している環境浄化材料は、無機イオン交換体のゼオライト、層状複水酸化物、粘土鉱物(層状粘土鉱物)、アパタイトです。これらの材料はケイ素、アルミニウム、酸素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど地球表面に豊富に存在する無害な元素から構成され、基本構造を保持したまま有害物質を除去できる循環利用可能な材料です。現在、これらの材料の機能を十分に発揮できるよう基本構造やイオン種の制御など材料物性に関わる基礎研究から機能性材料とのナノ領域での複合化などの応用研究まで幅広く取り組んでいます。
 土壌環境改善の一つとして、福島第一原子力発電所の事故により汚染された土壌から低環境負荷な方法で放射性セシウムを取り除き、長期安定化する技術の構築を目指しています。そのために、福島土壌中の放射性セシウムの安定化メカニズムを解明し、土壌成分を変質させずに放射性セシウムを脱離する方法を探索しています。また脱離した放射性セシウムの長期安定化法として無機多孔体であるゼオライトの構造内に閉じ込める技術の開発に取り組んでいます。
 水環境改善の一つとして、多摩川の富栄養化物質(窒素・りん)を中心とした水質調査を毎月実施し、窒素・りんの動態と濃度が高い地点を把握し、それらの除去に適した吸着材と植物による浄化法を検討しています。りんは枯渇資源でもあるため回収して有効利用する技術も求められ、無機イオン交換体による回収を検討しています。
 当研究室の主な取り組みを下図にまとめました。

研究関連サイト

科研費の研究成果紹介

粘土鉱物/アパタイト複合体によるCsとSrの同時回収・安定化に向けた基盤構築

研究課題/領域番号: 20K12226
研究種目: 基盤研究(C)
研究代表者: 渡邊雄二郎
研究分担者: 田村堅志 ((国)物質・材料研究機構)
研究期間:2020年4月~2024年3月

研究概要

福島第一原発の廃炉作業では燃料デブリの早期取り出しが緊急課題となっている。しかし取り出しには30年以上の長期間を要し、炉内環境中での長期的な安全保管対策と共に、環境中への核種移行遅延防止対策が必要となる。移行が想定される主な核種は、放射性セシウム(137Cs: 半減期30年)と放射性ストロンチウム(90Sr:半減期 約29年)であり、これらの核種を安定保持できる低環境負荷な材料が求められる。我々は自然に多産する粘土鉱物(雲母、ゼオライト)とアパタイトに着目し、Cs+とSr2+の特異吸着サイトの解明や多価カチオン導入及びこれらのナノ領域での複合化による高機能化に関する研究を推進している。本研究では、これまで蓄積してきた雲母とゼオライト/アパタイト複合体を用いた137Csの回収・安定化技術を基に、環境中への漏出時の137Csと90Srに対して高選択性を有する粘土鉱物/アパタイト複合体を開発し、燃料デブリ由来の汚染水中の137Cs, 90Sr同時回収・安定化法を提案する。

2020年度の実施内容

緊急性を有する本研究は、まず過去のCs+回収・長期安定化に関する成果を基に、一定条件で試験を行い、137Cs、90Sr同時回収・安定化法の開発に向けた試行研究を実施した。研究成果の一例を示す。

・雲母/アパタイト/ゼオライト複合体の作製

雲母の層間およびゼオライトのイオン交換サイトをCa2+にイオン交換し、リン酸アンモニウム水溶液で水熱処理することにより、水酸アパタイトを介した雲母/アパタイト/ゼオライト複合体の作製を検討した(模式図参照)。その結果、雲母及びゼオライト中のCa2+とリン酸アンモニウム水溶液中のNH4+がイオン交換し、放出されたCa2+とリン酸イオンがアルカリ条件下で水熱反応することにより、雲母及びゼオライト表面に水酸アパタイトが形成することが明らかになった。また本複合体がCs+とSr2+の吸着能を有していることを明らかにした。

Fig.1 本研究における複合体作製方法

*詳細な実験結果に関しては、関連学会等で報告後に随時公開していきます!

渡邊 雄二郎 研究室
(環境材料化学研究室)

小金井キャンパス 
〒184-8584 東京都小金井市梶野町3-7-2

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